イアン・ワージングシリーズ ご感想・レビューから

公開メディアでのご感想からご紹介させていただきます。心から御礼申し上げます。


ネガティヴ・ケイパビリティ:絶食系男子イアン・ワージングのレイライン紀行

◆「コミュニケーションが苦手な、歴史オタクのイアンの、ちょっと嫌な奴だけど根は真っ直ぐなキャラクターがとても魅力的。逆に素朴で朗らかなマークがチラチラと見せる屈折したところが気になって、二人の付かず離れずな関係に引き込まれました。

 物語は「不思議なこと」を通した謎解きものにもなっていて、先が気になってどんどんページを繰りました。私は窪地に落ちたあたりが一番好きかな。スピリチュアルなネタは大好きなんですが、あくまでもイアンの目線から振り回されずいい塩梅でストーリーに組み込まれてました」宇野寧湖 様)


History:低体温男子イアン・ワージングのハロウィーン

Amazon カスタマー

2017年2月4日

形式: Kindle版Amazonで購入
BLにかぎらず、あまり恋愛ものを読まないのですが、(いま「それでも乏しい経験の中では○○○や△△△が好きです」と例を出そうとしてとっさに出てきませんでした……)短い中に、マジメな学問の徒である主人公の静かな情熱が繊細に描かれていて、何度も読み返すお気に入りの一作になりました。ふとしたきっかけで出会い、距離をはかりながら近づくふたりの様子と、共有できない苦悩と喪失、些細な記憶の煌めきと重さ……。
わたしが「イアン・ワージングシリーズ」を読んだきっかけは、むしろ主人公イアンの仕事にまつわる「ストーン・ヘンジ」「レイライン」などに興味があったからでした。妖怪や怪談は大好きですし、一時期いわゆる「トンデモ本」についての本を読み耽ったことがあります。
と、いっても、イアンはもちろんそんなものを本気にしているわけでは全然ないのです。
イアンは、歴史学の徒だが、わけあって大学の研究室を追われ、勤めていた会社も辞めてライターの仕事でしのいでいる。厳密さを尊び専門外の物事には疎く、特に怪奇趣味や超常現象には興味もないし軽蔑しているのに、しばしば入ってくる仕事はなにかとオカルトがらみ。取材で訪れたイングランド北部で知り合った地元のチャーミングな、でもレイラインやストーン・サークル研究に熱心という点で決定的に相いれない青年の家に泊まることになったり、(ネガティヴ・ケイパビリティ: 絶食系男子イアン・ワージングのレイライン紀行 [イアン・ワージングシリーズ 1])「真理の探求者」のゴーストライターをつとめることになったり(ギャザリング・ストーム: さむがり男子イアン・ワージングのゴースト修行 [イアン・ワージングシリーズ 3])……。次作では「北海に沈んだUFO」(!)の取材だそうで、楽しみです。
この短いお話が描くのはそこで語られていないイアンの過去であり、「絶食系男子」のはじまりのはじまりとも言えるハロウィーンの夜。そしてそれから十年近くがたったハロウィーンの夜。彼は過去の亡霊に再会して……。長めの作品の前日譚的要素もあるので、それらを読む前に読んでもわかりやすいかもしれません。
日本でもほんの最近、英語教室の子供たちなどばかりではなく大人にまでポピュラーになりだしたばかりのハロウィーンパーティーは、英国でも伝統ある行事、というわけでもないようです。
「現在のハロウィーンは、アメリカで発達した祭の逆輸入である。だが本来この行事は、ドルイド教の新年の始まりの儀式に由来する。……」(作中のイア ンが書いた雑誌記事より)
イアンはあの有名な映画のジャック・スパロウも知らないし、派手なハロウィーンパーティーにはなじめません。しかしそこで素敵なアメリカ人の男性に出会い……。墓石の仮装をしたおちびちゃんもとっても可愛いですよ!