2020年春のコロナ番組覚書

横浜にあのクルーズ船が寄港してから一年。その頃はこういうことになるなんて想像もできませんでした。

以下は昨年の4月に準備したまま放置していた記事なんですが、この区切りにちょっと整理してアップしようと思います。

(現在ブログはbloggerに戻っていますが、この記事は上記の事情なのでサイト内の旧ブログに追加します)

 

 


コロナを「クルーズ船」の他人事と思っていた3月頃から、深刻さを実感し始めた4月頃にテレビで見た関連ドキュメンタリーなどから一部を記録します。

 

本当は、のちに自分で思い出すために見たものすべてを記録していこうと思ったんですが、連日のことでとても追いつかなくなり、書き留めるのはあきらめました。でも初期に集めていたリンクなどをとっておきたいので、少ないですがその分だけでも。

 

番組はすべてNHKで、リンク先はNHKオンデマンドか公式ページです。ものによってはその後もたびたび再放送されて、当初BSだったのが地上波でも放映されたりしています。

 

 

 

 

BS1スペシャル「ウイルスVS人類~未知なる敵と闘うために~

【出演】東北大学大学院教授…押谷仁,国立環境研究所 室長…五箇公一,作家…瀬名秀明,【解説】中村幸司

 

最初にコロナ関連で印象に残った番組がたぶんこれ。司会の瀬名さん目当てで見たミーハーです。(ゴメンナサイ)自分が見た初回放送日は3/19。まだまだ他人事だと思っていた時期でした。「感染症の歴史を振り返る教養番組かな?」という程度の認識で見始めたらとんでもなかった…! リアルに切り込んだ内容で、コロナに対する姿勢が変わりました。

そしてこの番組で押谷先生の発言――この先近いうちに出てくるのは「まず南北問題」という――で、「いきなりそこなんだ…!」と持ってかれました。見通している視野の広さとスパンが別次元で、頭を殴られたような衝撃でした。(その後別の番組でこれまでのキャリアを拝見して納得しました)…そして「日本人のメンタルは(命の選択を迫られる状況に)耐えられない。それをどう避けるか」といった話題も。目のうろこが何枚も落ち、気を引き締めざるをえなくなった番組でした。(それでもまだSFを見ているような感覚があったのは事実で、正直それは今も抜けきっていない感じがします。変化が急激すぎて、意識が追い付かないというか……)"Hope for the best, prepare for the worst. "(最善を望み、最悪に備えよ)という言葉を引用なさっていたのが印象に残っています。

 

その後シリーズ化し、切り口と瀬名さん以外の顔ぶれを変えた番組がいくつか放映されましたが、一番印象に残っているのは初回のこれです。1本目、2本目の内容は新書にもなっています。(購入させていただきました)

 

ウイルスVS人類 (文春新書) 

 

 

■ETV特集「緊急対談 パンデミックが変える世界〜歴史から何を学ぶか〜」

【出演】ヤマザキマリ、磯田道史、山本太郎、河岡義裕

(感想メモが見つかりません。すみません!)

 

■NHKスペシャル「新型コロナウイルス 瀬戸際の攻防 〜感染拡大阻止最前線からの報告〜」

印象的だったところ:クラスター対策班の先生方のリアルな仕事現場。会議机とパイプ椅子、そしてカップラーメン。こういう環境でやってらっしゃるのが衝撃でした。へんな言い方ですが、これがフィクションだったらこんな環境考えられない。

 

■ETV特集「緊急対談 パンデミックが変える世界 〜海外の知性が語る展望〜」

【出演】ユヴァル・ノア・ハラリ,イアン・ブレマー,ジャック・アタリ,(聞き手)道傳愛子


印象的だった一言:イアン・ブレマー「犬を飼え」、ユヴァル・ノア・ハラリ「民主的な監視」、ジャック・アタリ「利他主義は合理的な利己主義」

贅沢な顔ぶれです。皮肉にも、リモートでのインタビューが普通になったおかげ、とも思えます。 

 

 

 

BS1スペシャル「そして街から人が消えた〜封鎖都市・ベネチア〜」

 

予定されていたカーニバルがコロナで中止に追い込まれるまでのドキュメンタリー。ちょうどこれが放映される少し前、コロナ禍が始まった頃に映画『ベニスに死す』をテレビで再見する機会があり(蛇足ですが、ベニス=ベネチア/ヴェネチアです)、以前は気にしていなかった疫病の伏線描写がすごく刺さっていたので、こちらのドキュメンタリーを見るまでは、自分の中で「ベネチア=愚かな観光都市」というイメージが強くなっていました。その短絡的な捉え方自体を、ある意味粉砕してくれた番組でした。 

 

くちばしのついた「ペスト医者」の仮面は、春頃よくツイッターなどでブラックジョーク的に流れているのを目にしていました。このペスト医者やネズミ(ペストを媒介するもの)が、ベネチアのカーニバルの仮装やオブジェに使われていました。すごく違和感を覚えたのですが、じつは地元の人にとって、それらは「困難を乗り越えたことの象徴」なのだそうです。ここが一番印象に残ったところでした。

 

住民の方々の「ドラマ」には、正直センチメンタルすぎてついていけないところも感じ、それは(演出もあるかもしれないものの)、自分がこれまでに吸収してきた「イタリア」のイメージと同じ方向にあるものでした。ですが一方で、外の人間が観光やら報道やら芸術やらを通して一面的に解釈しがちなもの――きれいなイメージであろうと、ネガティブなイメージであろうと――の下に、幾層にも積み重ねられた、部外者には想像がつかない、立体的・有機的な歴史や感情が横たわっているのだと、今更ながら深く印象付けられました。

 

 

 

こちらはテレビじゃないですが、SF作家テッド・チャンさんのインタビュー

Ted Chiang Explains the Disaster Novel We All Suddenly Live In 

(「テッド・チャンが解説する、我々が突然放り込まれたこの災害小説のような世界」)

 

印象的だったところ(拙訳):「フランス革命期の貴族階級は世界の終わりだと思っただろう。でも世界は終わらなかった。起こったことは変化だ」

 

作家さんというより文化人としてもっと発言を聞いてみたい方です。イマドキ珍しくウェブサイトも持たずSNSもなさってないんですよね。情報が得にくくてファンとしては苦労しますが、正直その姿勢は賢明だと思います。