神田古本まつり/戦利品とランチ

無料配布されていたガイドとマップ。
無料配布されていたガイドとマップ。

昨日、神田古本まつりに行ってきました。11/4までとのことで、行けるのが昨日しかなくて。今日は文化の日だそうで、ゲットした本をまったり愛でるのもいい過ごし方じゃないかなー(笑)……ということで、疲れた足を休めつつ、ご報告がてら戦利品がらみのお話など。 

 

うちからだと神保町まで一時間半くらいかかります。朝けっこう早めに出たつもりたったんですが、着いたらもう11時。まずは少し本を見て、ランチタイムのピークを外してゴハンを食べることにして、いざ物色開始です。というか、もう駅を出るとすぐ青空古本市の出店が続いていて、否応なく。(笑)とりあえず出店に沿って左折して進みました。

 

←途中こんなガイドとマップのセットを無料配布しているところがあり、いただいてきました。まつりじゃないときもこういうマップは無料配布されています。正直歩いてるときはしらみつぶしなのでこれは見ないんですが、冊子にはジャンルごとの古書店ガイド、店舗紹介などの他にゴハンやお茶のお店の紹介もあり、食事やお茶のときに見たり、帰って次に行きたいなーというお店を探すのにもお役立ちです。

 

『世界を騒がせたスパイたち』下巻

現代教養文庫の『世界を騒がせたスパイたち』。今回ゲットした下巻と、以前地元で見つけていた上巻。やっと揃いました♥
現代教養文庫の『世界を騒がせたスパイたち』。今回ゲットした下巻と、以前地元で見つけていた上巻。やっと揃いました♥

神保町はなかなか行かなくなったので、行くとなるといつも「何か買って帰らなくちゃ」と思ってしまいます。なので何か一冊買うまではちょっと落ち着かないんです。最初の一冊を買うとようやく落ち着いて「漫然と本との出会いを楽しむ」モードになる、というのが自分のパターンです。

 

今回その最初の一冊になったのは、現代教養文庫「ワールド・グレーティスト・シリーズ」(このシリーズ好きです♥)のひとつ、『世界を騒がせたスパイたち』……の、下巻です。以前地元のブックオフで上巻だけゲットしたんですが、下巻はアマゾンのマーケットプレイスにもなく、すぐほしい訳でもないので「それとなく」探していた本の一つでした。メインストリートから横に入る路地に並べてあった棚の群の果てで見つけ、少しカバーに少し染みがありましたが、これで上下とも108円で揃いました。自分的にはお祝いです♥

 

年代順に実在のスパイを紹介する本で、上巻はスパイの嚆矢から二次大戦あたりまで、マタ・ハリやらキム・フイルビーやらといった有名どころもこれに入ってます。

 

下巻は冷戦から現代(刊行時)まで。帰りに電車の中で少し読んできたんですが、なかなか読み応えがあります。よくスパイもので出てくるようなことって現実にあったことなんだなーと……。

 

腐女子として食いついてしまうのはやはり同性愛関連なんですけど、そのケースのウィリアム・ヴァッサルという人物が紹介されてました。思想的な理由でスパイをするのではなく、敵方に証拠写真などを撮られて弱みを握られ、スパイ行為を強要されるケースです。この時代、同性愛はイギリスでもソ連でも発覚すれば監獄行きなので、ヘテロのハニートラップとはかなり違うニュアンスだと思います。このヴァッサルもずっとビクビクしながらスパイ活動をさせられていて、イギリス当局に捕まったときはどこかで「じつに不思議な、ほっとした気持ちだった」と語ったそうです。18年の投獄後仮釈放され、修道院に入ったそうですが、テレビのスパイドキュメンタリーでインタビューに答えたとのこと。その中で「私は誰も憎まない。KGBの連中もね。彼らは彼らの役割を果たしていたにすぎないのだ」という諦観とともに、彼と同様に同性愛者でスパイだったアンソニー・ブラントに言及し、彼はスパイ行為を告白したあとなぜ15年も自由の身でいられたのか、と苦々しい気持ちを吐露したそうで、上巻に入っているブラントも改めて読みたくなりました。

 

アンソニー・ブラントは、王室とのつながりがあったために長いことスパイ行為の処罰を免れていたと言われる美術鑑定の権威で、イアン・リチャードソンが彼を演じた『諜報員ブルント 第4の男』(一般的にはブラント表記ですが、スペルはBluntです)という映画があります。リチャードソンはシャーロック・ホームズを演じた他、『コナン・ドイルの事件簿』ではホームズのモデルになった実在のベル教授役も演じていて、ホームズファンとしては馴染みのある俳優さんです。(この方のホームズ映画はすごく脚色が上手だったので、あまり言及されないのが不思議です!)

 

『諜報員ブルント』はレンタルで見ましたが元はテレビ映画で、画質を含めていかにもその程度のクオリティだったように記憶しています。が、若い頃のアンソニー・ホプキンスが同性愛者を演じているのも今では珍しいし、リチャードソンもエレガントだった上にこのテーマなので、リアル店舗で安く売ってるのに偶然出会えたらほしいなー、と思っている一本です。地元のレンタル店ではすぐに店頭からなくなってしまったので……。

 

ポケミス/ブランドステッター・シリーズから

以前このブログでもご紹介したホモセクシュアル探偵、ブランドステッターシリーズの最終巻『終焉の地』と『真夜中のトラッカー』。
以前このブログでもご紹介したホモセクシュアル探偵、ブランドステッターシリーズの最終巻『終焉の地』と『真夜中のトラッカー』。

…ちょっと横道にそれすぎました。この調子で横道に入りまくってると終わらないのでささっと行きます!(笑)

 

このブログでも以前ご紹介しました、ホモセクシュアル探偵デイヴ・ブランドステッターシリーズから2冊をせしめてまいりました♥(以前の記事はこちら)まずは最終巻の『終焉の地』。500円で正直それほどお得感はなかったんですが、オビの裏側にシリーズすべてのポケミス番号(?)が印刷されていたので、「このあと探すのに役立てよう」と買いました。(古書店ではこのナンバー順になってることが多いので著者名で探すより楽なんですけど、スマホを使ってないのでその場では調べられなかったんです)同じお店にシリーズは数冊ありましたが、これもあまりお安くなかったので見送り、そのあとはポケミスを見つけるとサーチしました。で、200円で見つけたのが『真夜中のトラッカー』です。

 

シリーズの邦訳は三作目まで読んだところなんですけど、数冊集まったものは順不同で、次の『誰もが怖れた男』が手に入ってないので、仕方なく安い原書のkindle版で『The Man Everybody Afraid of』をちまちま読んでいます。(たまにしか読まないのでなかなか進みません)でもやっぱり日本語でサクサク読みたいので、残りの巻をゆるく探しています。その気になれば通販で揃いますが、リアルで見つけたい感じなので。今回で半分くらい揃ったことになりますが、いちおう順番通りに読んでいるので、これらはしばらくお預けです。

『終焉の地』に入っていたナゲコミ。このタイムスリップ感が好き。(笑)
『終焉の地』に入っていたナゲコミ。このタイムスリップ感が好き。(笑)

余談ですが、古本でときどき中に入ってる「今月の新刊」みたいなナゲコミを見るのがけっこう好きです。時代感を感じるのはここなんですよね。昔のテレビ番組の録画を見返した時に、番組以上にCMで強烈な時代感を感じるのとちょっと似ているでしょうか。

 

で、『終焉の地』に入っていたのがコレ。映画化作品の紹介でタイムスリップしました。ティム・ロビンス出演、ロバート・アルトマン監督の『ザ・プレイヤー』、ブリジット・フォンダ出演『ルームメイト』(の原作)。両方見た気がするので、なんだか「うわー」と思いました。中身はあまり覚えてないんですけど。(笑)この時期は映画雑誌も毎月買っていたので、見なかった作品でも記事で読んだへんなトリビアを覚えている場合があります。妙ですよね。(笑)

 

同じ理由で、巻末に入ってる新刊・既刊紹介も好きです。やはり特に映画化作品、ノベライズ作品があると時代感がぱっとわかりますし、読んでない本(ほぼすべてがそう)のリストも、紹介文を読むとその時代の流行りとかなんとなく伝わってきます。懐かしかったり、それより古いものだと時代感を想像できたり、やはり楽しいものです。

『ダウニング街日記』上下

チャーチルの秘書官の二次大戦の時期の日記。おそらくイアンには「基礎情報」。チャーチルの著作と合わせて読むと立体的になりそう。
チャーチルの秘書官の二次大戦の時期の日記。おそらくイアンには「基礎情報」。チャーチルの著作と合わせて読むと立体的になりそう。

 

今回一番嬉しかったのが、『ダウニング街日記 首相チャーチルのかたわらで』上下巻。チャーチルの秘書官ジョン・コルヴィルがつけていた第二次世界大戦の頃の日記です。以前図書館で借りたのですが、「こりゃ手元に置いてちょいちょい参照したいやつじゃん!」と思ってほとんど読まずに返し、いつか買おうと思っていました。ちょうど映画の『チャーチル ノルマンディーの決断』を見たばかりで(これは別に感想を書きたいです)、首相自身の二次大戦回顧録を読む時にこの日記も参照したいなーと思っていたので、今回わりと狙っていたものでした。

 

わりとすぐに見つかったんですが、もう少し安いところないかなーと思って粘り、見つけたものはさらに高かったので(笑)、結局最初に見つけたお店に戻って買いました。上下セットで2250円ナリ。値札は2500円なので「あれっ」と思いましたが、古本まつり協賛の一割引きだったようです。カバー以外は使用感なしの美本で、元が各3980円であることと中身の貴重さを考えたらありがたいです。

 

ただ、上記の映画とのからみで知りたかったノルマンディー上陸作戦の時期は、カンニングしたところこの秘書官自身が空軍に行ってたそうで、チャーチルの側にはいなかったみたいです。ちょっと残念ですが、それ以外のところも興味津々なので少しずつ楽しみます。チャーチルは現在書いてるイアンシリーズの主人公のお得意分野ですし、これなんか彼にとっては基礎資料の一つのはず。自作のキャラに追いつこうと微力ながら努力をしてオリマス。見える成果が出るかは謎ですが……。(笑)

 


戦利品は以上でした。お昼ごはんは、昔から気になっていたレストランに入りました。神保町の地下鉄駅からの出口、岩波ホールの下の階段の途中にあるトリッペリア モツーダというお店。いつも前を通ってたのに、薄暗い店内がなんとなく入りにくくて、一度も入ったことがありませんでした。……若い頃は神保町というと「お昼はボンディーでチーズカレー!」が定番だったんですが、今はあのボリュームはきついのと、胃の調子が良くなくて刺激物は避けたかったのもあり、なんとなく朝から「グラタン食べたい」と思ってたんです。そしたらそのグラタンがこちらのランチメニューとしてどどんと宣伝されていたので、地上に出る前にここで食べようと直感で決めました。(笑)1時過ぎに入り、通してもらった席は奥の角で、自分には最高に落ち着ける席でした。空いていたのもあって雰囲気よかったです。サラダとドリンクバー付きで990円。めちゃくちゃおいしかった……! 最近グラタンなんてうちでは作らないし、冷凍ものやスーパーのお惣菜でしか食べてなかったのでことさらに。ちゃんとしたお店で食べるグラタンて別ものですねえ……。イタリア大衆ワイン酒場とのことで、下戸の自分にはワインは堪能できませんが、便利なところにあるしおいしかったので、また行ってみたいです。

 

…さて。こうして振り返ってみると、今回購入した本は古本まつりの青空古本市じゃなくて店舗から買ったものでした。こういうもんかな(笑)。神保町の古書店、特に古いお店は独特の古本の匂いがあって、ブックオフなどのユーズドブックのお店とは別ものです。久しぶりにこの匂いを嗅いで、貴重な木版画なんかも当たり前のように展示されてるのを眺めたりして、贅沢な時間でした。なんだか生き返ったような気がします。次は胃の調子のいいときに行って、お茶や食道楽のほうも楽しみたい……。それはそうと、まずは本を楽しみます♥