今日はちょうど仕事の納品を終えたタイミングで、見たかった『ダンケルク』をすべり込みで鑑賞してきました。
第二次大戦時、フランスのダンケルクの海岸に追い詰められた英軍兵士を、対岸のイギリスから民間船が協力して救出した、という逸話を映画化したもの。この出来事自体はドラマの『刑事フォイル』で初めて知りまして、以来興味がありました。その題材の映画化、これはぜひ見ておかなくちゃ!と思っていたのですが、仕事の他イベントが続いていたのもあり、なかなか時間がとれずとうとう最終日の鑑賞になってしまいました。でも行けてよかったです!(このへんの歴史はイアンの「領域」でもありますし!)偶然ですが、すこし前にご紹介した"Queers"で初々しいゲイのティーンエイジャーを演じていたフィン・ホワイトヘッド君も出ているというので、こちらも楽しみでした。メインキャラは複数ですが、ホワイトヘッドくんの役はその中でもメイン中のメインでありました。
ちょっと構成が変わっていて、映画はフランスからあの手この手でイギリスに帰ろうとする若い兵士 (これがホワイトヘッドくん)、イギリスから救出に向かう民間船(船長役が『ブリッジ・オブ・スパイ』のマーク・ライランス)、同じくダンケルクに向かう戦闘機スピットファイア(パイロット役がトム・ハーディー)の三つのシーンが同時進行します。二次大戦映画のイギリス軍というと、レーダーや模型を使って戦況を大きく把握するシーンが良く出てくるイメージがあったんですが、今回はそういった全体像を解説するシーンが一切なく、台詞も少なく、ひたすら「現場」を見せていきます。爆撃や船の沈没などのシーンも、広い海岸を見せるシーンもいちおうありますが、そこで迫力を出すという感じでないんですね。題材から予想するよりもずっとパーソナルな印象で、大作戦争映画という感触ではありませんでした。「物語」という感じでもない。ひたすら現場、出来事を見せる、体感させる、という感じでした。
三つの「現場」で常に「どうなるんだ」というサスペンスがあり、うまく集中力が途切れないように引っ張っていきます。へんな言い方ですが、昨今インターネットの影響で1分の動画でも「長く感じる」ようになった観客を「飽きさせない」工夫って、こういうものなのかもしれないな……なんてことも思いました。緩急で言うと緩がなく、ほぼ急の連続なのです。ノンストップでゴリゴリ押していく感じで、最後も「生きて帰れてよかった」という大団円ではなく、これからまた別のところへ送られるんだろうな……という方を強く感じました。最後に出てくるチャーチルの言葉「We shall never surrender.(我々は決して降伏しない)」が皮肉に響きます。うまい締めくくり方だなあ、と思いました。
ただ個人的に残念だったのは、協力した民間船の例として描かれるライランスの船がプレジャーボートだったこと。ないものねだりですが、できれば漁船と漁師で見たかったです~!(それ一番期待してたので!(^^;))
…今回はとにかく体験する映画で、情緒や心理はすごくシンプル。でも現実にはこういうものかもしれないな、とも思います。見た後は……ジェットコースターに乗った後のような酩酊感があったのですが、一方で映画としての感動というか印象が薄い、という感じはありました。言葉にしにくいというより、何か言いたい感じにならない。でもつまらないんじゃないんです。ただ、見た後「この映画について何かやみくもに語りたい~っ!」…という感じにならない。(書いてるけど(笑))たぶん臨場感がメインディッシュで、ある意味哲学というか、背骨を通る理屈の部分を感じないからかな……と思います。(チャーチルの著作もそんな感じで、生き生きと描かれてるけど妙な印象の「薄さ」も感じます)ここんとこ体調もイマイチなので、そのせいももしかしたらあるかもですが……でも過去に見たクリストファー・ノーラン監督の映画……プロフィールを見たら『インセプション』『プレステージ』『インソムニア』『メメント』…あたりは見ていたのですが……思い返すとみんなわりとそんな印象があります。凝ってるなーとか、よく考えてあるなーとかは感じるんですが、のめり込むって感じになった覚えがない。これは個人的な好みの問題かもしれません。
でも繰り返すようですがつまらなかったわけではまったくなくて。ミーハー目線では顔立ちの美しいフィン君は見ていて目の保養でしたし、ハリー・スタイルズはああしているとなんだか若い頃のルパート・グレイヴスみたいで、こちらも目の保養でした。他にジェームズ・ダーシー(❤)やキリアン・マーフィー、ケネス・ブラナーなんかも出ていました。(ブラナーは将来チャーチルがやれそうなお顔になってきましたねー…)
最後にホワイトヘッド君が新聞で読んでいたチャーチルの演説は、ググってみたら英語版wikipediaやYoutubeにありました。やはり有名なスピーチなんですね。
Wikipedia: We shall fight on the beaches
ともあれおかげさまで自分に活も入ったので、イアン用の遠回しな資料(図書館借りして手元にほしくなった『第二次世界大戦の起源』)を帰りに買ってきました。がっつり今回のテーマではないですが、彼が詳しい領域の基本図書の1つだと思うので……これから図書館本から付箋を移そうと思います♪
著者はA. J. P. テイラー。大好きなE. H. カーせんせの著作でもチラチラと名前が出てくる方です。
文庫なのはありがたい❤ これで線も引き放題だー♪(笑)
10/20は他にもいろんなことがてんこ盛りの一日でした。まずはテッド・チャンさんのお誕生日。(『メッセージ』販売&レンタル開始しましたね。チャンさんの特典動画がブルーレイにしか入ってないので、今まで手を出さなかったブルーレイプレイヤーを買いました)皇后陛下もお誕生日だったそうですね。
そしてフランスの女優ダニエル・ダリューが亡くなったそうで。21世紀になっても出演作があったことをさっき知りました。個人的には記憶がいきなりジェラール・フィリップの『赤と黒』くらいに飛んでしまうので、失礼ながらご存命とはまったく思っていませんでした。100才でいらしたそうですね。フィリップはかなりの早世ですし、そう思うと彼の生きていた時間と地続きなんだなあ(?)……と、妙な感慨があります。
個人的なほうでは、今日は映画に行く前に『ドラえもん物語~藤子・F・不二雄先生の背中~』が到着して、一気に読みました。先日新聞で知った漫画で、F先生のアシスタントをなさっていた漫画家のむぎわらしんたろうさんが、先生の思い出をお描きになったもの。中には写真などの資料や、先生がむぎわらさんに書いたアドバイスなどもそのままの文字で載っています。
「漫画は一作一作初心にかえって苦しんだり悩んだりしながら書くものです」
という一文など、深いところに刺さりました。漫画に限らないお話として、いつでも思い出したいお言葉です……。
亡くなる直前までお仕事をなさっていた、というお話は以前読んだことがあったのですが、改めて読むと泣けてしまいます。……じつはF先生は昔から大好きでした。でもファンとしてはヨコシマというか(?)、藤子A先生が書いた回想記『二人で少年漫画ばかり描いてきた』からファンになったので、半分ご本人のファンです。(うちにあるのは文庫のこちらのバージョンですが、新バージョンで今も流通しているのは嬉しい❤)作品では、評価が高いシリアスなSF短編よりも明るいほうが好きで、一番好きなのは『21エモン』です。(そうたくさん読んでるわけでもないですけど……) …こちらはまた語りだすと長い話になっちゃうので、いつか機会があったら改めて。
今回のこの本、F先生ファンの方には心からおすすめです。
…ふう、ブログ3~4回分くらいネタがてんこ盛りの一日でした~。(笑)