賞味期限の切れた「世紀末」/「カッシーニ」と『交霊航路』の思い出

昨夜は土星探査機カッシーニがお役目を終え、土星に落下して燃え尽きるのだというニュースがありました。ここで公開している改訂版『交霊航路』でもほんの一瞬助演(?)していただいてるので、「ええっ、あのカッシーニさんが……」と妙な感慨があり、お見送りをしようとYouTubeで管制室のライブ配信を視聴しました。ネットはありがたいもんですね☆ (贔屓俳優ジョナサン・アリスさんが『オデッセイ』で管制責任者をやってから、「NASAの管制室」自体が萌え対象にもなっております!(笑))もちろん映像は管制室で、リアルのカッシーニの映像が見られたわけではないんですが、拍手の起こった瞬間を目撃できました。二十年間おつかれさまでした!

 

NASAの公式サイトには特設ページもできています。「グランド・ファイナル」ってかっこいいですね……。

Cassini: The Grand Final

 

「カッシーニ」がこの世からいなくなることへの感慨は、ちょっと妙な角度からでもあります。ご存知の方も多いと思いますが、じつは二十世紀の「世紀末予言」に関するトピックの1つでもありました。

 

昭和の大ブームになった「ノストラダムスの大予言」にある

「1999年、7の月、空から恐怖の大王が降ってくる……」 

という部分の「恐怖の大王」、これの候補のひとつがカッシーニだったんです。

 カッシーニの打ち上げは1997年ですが、原子力電池を積んでいて、1999年の夏に地球をスイングバイ(天体の重力などを利用してスピードや軌道を変えること)するというスケジュールでした。「恐怖の大王」説は、そのスイングバイのときにカッシーニが地球に落下し、放射性物質がまき散らされて壊滅的な被害が……という説でした。いろいろツッコミどころはあるとは思いますが、世紀末ブームの中で「原子力なんたら」が「空から落ちてくる」と聞けば、想像を膨らますには充分だったと思います。

 

…というわけで、自作では申し訳なくもそのへんのイメージで使わせていただいたのですが、それももう「今はなき土星探査機」の話になっちゃったんですね……。その他いろいろ「世紀末っぽいネタ」をいれたのをなんとなく思い出したのですが、今高校生の方がすでに21世紀生まれだと考えると、このへんもだんだん注記がいるようになるなーと……「2000年問題」も今ではピンとこないですね。もはやレトロネタかもです。(笑)

 

…いちおう書きますと、2000年問題というのは、西暦表示で19●●年の「19」の部分を省いて二桁で表示する形式がよく使われていたので、1999年から2000年になるときに99→00となってしまい、コンピューターが狂うのでは……という問題でした。個人的には「わかってるならコンピューター会社が手を打ってくれるだろう」とのんきに構えていましたし、特に問題も聞かなかったように記憶していますが、もともと「1999年で世界は……」という説がいろいろ流行っていたので、「説得力」を感じる土壌はあったように思います。

 

1999年が過ぎると、マヤの暦がそこで終わっているという2012年がブームになって、たしか映画もありましたね。(これは見てない気がする)。なんのかんの言っても、終末予言ネタはちょっと心惹かれるものなのかもしれません。そのほかにも惑星直列とかグランドクロスとか(前者は太陽系の惑星が一直線に並ぶので重力の異変などが起こる、後者は同様に惑星が十字架型に並ぶので何かが起こる……とささやかれていた説。残念ながら(?)何もありませんでした(笑))……ちょっと怖いけど壮大でワクワクする、「世紀末」っぽいネタっていろいろブームがありましたね。今思うと楽しかったなあ……。(笑)そして時事ネタはどんどん歴史トリビアになっていくのだなあ……と、今回カッシーニさんを見送りながらしみじみ感じたのでした。

 

(ところで、今回「世紀末」と打とうとするたびに「聖飢魔Ⅱ」と先に出ました。たしかに元信者なんですが、そ、そうなってるの?うちの辞書?(^^;))

 


[作品について]

『交霊航路』は10年ほど前に同人誌で出した小説で、SFとホームズパスティーシュ風の趣向が混じり合ったごった煮作品です。初めて小説で長めのオリジナルを書いたのがこれで、少数ながら好意的なフィードバックをいただけて、文章作品を書く励みになった思い出深い作品でした。その後某小説大賞応募のために改稿し、一次選考通過で講評をいただくことができました。(ホームズネタも特に予備知識はいらない書き方を心がけたつもりでしたが、やはりこの部分が一般向けにはちょっと……とご指摘いただきました。内心覚悟もありましたので納得です。(^^;)でもご講評はとても参考になりました)

 

その後また少し手をいれ、昨年からサイト内のライブラリーで全編無料公開しております。ご閲覧くださった皆様、ありがとうございます。カッシーニや2000年問題は改稿時に時代感を出そうと入れたので、昔同人誌でお読みいただいた方はご記憶にないと思います。(入れていたとしても忘れるくらいの扱いですが(^^;))その他も特に後半はディテールをかなり書き足しているので、よかったら昔お読みいただいた方にもご覧いただけたら嬉しいです。