ここのところきちんとした読書に集中するのが難しい状態が続いて参っていたのですが、ネット接続の時間を意識して制限するようになったせいか、だいぶ本が読めるようになってきました。そのなかからいくつか。
大事なことに集中する
ネット接続の時間を減らすのに背中を押してもらった本。自分の場合、成果を出したいとかいう以前にもう、ほんとに物が考えられないというか、まともに本も読めない状態になってしまい、ほとんどノイローゼに近い状態になってた(^^;)ので、以前個人ブログのほうでちらっと書きました『ネット・バカ』と同じ文脈で大変助かりました。(あ、今どき「ノイローゼ」って言葉はあんまり聞かないですね(笑)) 奇しくも『ネット・バカ』の原題はThe Shallows (シャロー=浅い/浅薄な)、だったんですが、この本では集中・没入するタイプの仕事を「ディープ・ワーク」、マルチタスクなど散漫な状態でする仕事を「シャロー・ワーク」として対照させています。
向き不向きはあると思いますが、自分の場合ディープ・ワークから遠ざかってシャロー・ワークばかりが続いていると、調子が悪くなるようです。シャローって「呼吸が浅い」という意味でも使う言葉で、まさにそんな感じで苦しくなるような。でも、最近いろんなところで目にする「ネットの弊害」を見てると、けっこうよくあることなのかも……と思います。以前やはり個人ブログのほうで、テッド・チャン氏の「ネットの影響でアテンション・スパン(注意力を維持できる時間)が短くなってる」という話をご紹介したんですけど、そういう症状は多かれ少なかれ、ネットを使う人のほとんどに起こっているんだと思います。それを不快に思わず使いこなせるかどうか、というのが分かれ道ですね。(自分は順応できてない組です(^^;)) この本の著者は学者さんなので、ライフスタイルとしてすっかり真似することは不可能なんですが、とりあえず割り切るべきところを見極めるのに役立つ本でした。(ツイッターに関しては、確かに気は散るんですけど、個人的には逆に気を紛らわせたいときとか、情報を得るとかご縁ができるとか、かなり恩恵も受けています。なので、今のところは時間制限はしつつ使いつづけたいなーと思っています。バランスのとり方模索中☆)
読書の技法
自分が熟知していない分野の本は速読できない、というご託宣と、「熟読」「速読」「超速読」のやり方がとっても参考になりました。しっかり読もうとすると線を引いて汚してしまうほうなのですけど、それでいいのだ、とお墨付きを頂いた感じで気が楽に。抜き書きも似たようなことを我流でしてたんですが、大きく学んだのは「超速読は熟読しなくていい本を選別するため」、という割り切った考え方。なるほど! これもなんか「買った以上全部を読了しなければ」というストレスから解放されていっきに楽になりました。佐藤優さんは池上彰さんとの蜜月ペアで「ファン向け」の御用達道具開陳本とか大人気ですね。自分はそこまでのファンではないので、蜜月対談本はたぶん過去に1冊しか買ったことがないですが、たしか中にあった「情報はできる限り母国語で取れ」とか、今もちょくちょく肝に銘じてますし、重宝な情報源として紹介されてたCNNやウォールストリート・ジャーナルの日本語版サイトは現在よく閲覧させていただいてます♪ 本の読み方の本では、他でズバリ『本を読む本』という古典的なのも以前読んだのですが、そちらも良書でした。
トロイの癒し
北アイルランド出身の詩人シェイマス・ヒーニー(1939年4月13日 - 2013年8月30日)の戯曲。ソフォクレスの作品を下敷きにしたものだそうで、毒蛇に噛まれて歩けなくなり、オデュッセウスに島に置き去りにされた男ピロクテテスの物語。リアルタイムのアイルランドの情勢などをオーバーラップさせているそうで、そのへんは注を読むとよくわかるようになっています。が、もっと一般化して恨みを乗り越えるのは自分自身の力によるとか、特に後半に出てくる警句めいたセリフがいろいろな角度で深読みできる作品でした。短いのでサクッと読めますが、時間をかけて(詩人さんの言葉ですからできれば原語で)味わえれば理想なのかも。もちろん戯曲ですから上演されたものを見られればもっと理想ですが。
ヒーニーさんを知ったきっかけは、たしかルイーズ・ブレーリーさん(SHERLOCKのモリー役)が引用BOTのツイートをRTしていたことで、それからなんとなくそのBOTをフォローしています。今回初めてプロフィールを調べて、ノーベル賞受賞者だったことを知りました。ぜんぜん知らなかったです。(^^;)
もういちど読む山川世界現代史
こちらは現在進行形。佐藤優さんの本で「本には読む順番がある」というのを読んで、歴史関係の本を読む際に痛いほど感じる(笑)基礎知識のなさをなんとかしたい、ということで。まずは姉妹本(?)の『もういちど読む山川世界史』から手をつけて、今はこちら。「近代世界システム」という、世界を「中心国」(西欧)と「周辺国」「半周辺国」の関係として読み解く切り口で書かれていて、『…山川世界史』が高校教科書をベースにしていたのとは違い、昔同社から出ていた現代史の単行本シリーズが底本らしいです。じつはその現代史シリーズのイギリス編がすごくよくて、図書館で借りたあと購入し、今も線引いて汚しながら読んでいるので(笑)、今回の本も信頼して読み進めてます。たしかに各国史の平行記述より入りやすいです。このへんの時代はイアンの専門領域なので、がんばって追いつきたいです。というか、楽しくなってきました。資料読みがライフワーク化してはミイラ取りがミイラなので(?)気をつけなくてわ~。
両大戦間における国際関係史
ファンになっているE・H・カーせんせの本を古書でいろいろ集めています(安価なものだけですが)。これはタイトル通りの本ですが、カーせんせの本としては出色の読みやすさ。こちらもイアンの領域の本なので、線で汚しつつ、舐めるように少しずつ読んでます。60~70年代の本はやっぱり時代感がたまらんです~❤(笑)
最近のトランプ氏がらみのアメリカの孤立主義化やヨーロッパの右傾化などが、一次大戦後~二次大戦勃発前(ちょうどカーせんせの本で読んでるあたり)と似た状況になってきてる、という話が聞かれます。確かに、と感じるのですが、妙なシンクロはしてほしくないものです。
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…ぜんぜん関係ないですが、今日テレビで声優の三ツ矢雄二さんがカミングアウト、という話題でご本人が出ていて。スラップスティック(という声優さんのアイドルグループみたいなのが昔ありました)とかの頃からそういうキャラで真正だと思っていたので、正直「ええっ、今さら?」というのが第一印象でした。が、二十代~三十代初め頃まで一緒に暮らしていた人がいた、とか堅実なお話を聞いているうちに、「キャラ」として表現することとリアルライフをカミングアウトすることはまったく別物なんだな、とつくづく思いました。今後は海外のゲイがテーマのミュージカルを日本に持ってくるようなプロデュースなどなさりたいと話しておられました。楽しみです。しかし声も見た目もあまり変わらないですねえ……62才とは驚きでした! 『コンバトラーV』とか懐かしい……!
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